中級レベルになると、ある程度日本語が分かるので、ラクをしようと思えばラクできます。ですが、ここから上級レベルに上がるためには、さらなる努力が必要です。具体的には、「正確さ」と「流暢さ」を高めていく努力が重要です。

順番に詳しく説明します。

(1)正確さを高める
間違った使い方を何度も繰り返している人がいます。専門用語で、これを「誤用の化石化」と言います。ある言語項目や規則が誤って習得され、それがそのまま残っている状態です。間違っていることを認識していないか、間違いを軽視していている可能性が高いですが、ネイティブから見ると気になる間違いかも知れません。ネイティブや日本語教師に指摘をして貰い、直して行きましょう。

(2)流暢さを高める
よりネイティブらしい言い方、使い方を習得する必要があります。そのために有効なのは、多読、シャドーウィング等です。ネイティブが読むもの、聞くもの、に出来るだけ多く接しましょう。

私からのアドバイスは2つあります。
(1)言語学習に関する最低限の知識を持つ。
(2)戦略的に学習する。

多忙なビジネスパーソンの日本語学習で最も大事な点は、自分自身のゴールを明確にして、そのゴールのために最適化した学習計画を作ることです。Amazonで見つけた初心者向けのテキストを、明確な理由も根拠もなく買ってみたり、知り合いというだけで日本語指導力のない日本人から教えて貰うのは効果的とは言えません。お金と時間の無駄遣いになる可能性が高いです。
日本語の習得は、世界最高峰の山に登るより長い時間が掛かります。しかし、登山ではほとんどの人が計画を作るのに、日本語の習得のために計画を作る人はほとんどいません。私は日本語の習得を断念してしまう人が多い理由はこれだと思います。

(1)言語学習に関する最低限の知識を持つ。
皆さんにとって都合が良い情報、好ましい情報が正しいとは限りません。私は以前、「日本語は3か月で習得できる」とアピールしていたブロガーのレベルチェックテストに関わったことがあります。当社の経験豊富な講師(なお、彼女はACTFL-OPIの認定テスターです)が、インタビューを行った結果、その人のレベルは10段階のうち下から2番目という判定でした。その人は、いくつかのフレーズを言うことは出来ましたが、講師からの問いにほとんど答えられませんでした。その人にとって、皆さんが本当に3か月で習得できるかどうかは重要ではなかったようです。そのブログのページビューが増え、アフィリエイト収入が入り、グッズが売れることが彼の真の目的だったようです。
私も語学を3か月でマスター出来たら素晴らしいと思います。しかし、実際には、それよりも多くの時間を必要とすることは、別のページで説明した通りです。

(2)戦略的に学習する。
孫氏の兵法に「彼を知り己を知れば百戦危うからず」という言葉がありますが、これは日本語学習にも当てはまるでしょう。
まず、日本語の特徴、日本語学習のポイントを理解しましょう。次に、投下可能なリソースを正確に把握した上で、実現可能性の高い目標を設定しましょう。その上で、自分に合った学習計画を作りましょう。そうすれば、習得できる可能性が高くなります。
私の情報が日本語学習者にとっての兵法になることを願っています。
※学習計画を作るポイントについては、別のページを参照下さい。

この質問への答えは、技術革新のスピード、正確性などの影響を受けますが、それ以上に、皆さんがコミュニケーションについてどう考えるかに関わる問題だと思います。そこで、私なりの考えをお伝えします。

私はコミュニケーションには2種類の目的があると考えます。一つはタスク遂行のため、もう一つは関係構築のためです。前者には、報告、依頼などが含まれますが、これらは自動翻訳で済むかも知れません。特にチャットやメールなど、文字化されるコミュニケーションでは自動翻訳の精度は高くなってきています。しかし、後者のためには、相手の文化や思考なども理解できた方が良いです。そして、そのために、その言葉を習得することが有益で役に立ちます。言葉は文化の一部と言われている理由はそこにあるでしょう。
ですから、日本人とより良い関係を構築したい人にとっては、どれだけ自動翻訳の精度が高くなっても日本語を勉強する意味はある、というのが私の考えです。

何時間掛かるかは、人によって異なります。あなたの言語学習能力、学習方法、使用できるツールや研修、あなたの母語との違い、等が影響します。

要因が複雑なため一概に断言するのは難しいです。しかし、次の2つの情報は参考になるでしょう。

(1)JLPTの最上位級に合格するには900時間
日本語の試験で一番有名なテストはJLPTです。この最上位級はN1級です。JLPT は2010年に運営が少し変わりましたが、それまで公式サイトで、「最上位級の合格までに必要な時間は約900時間」と記載されていました。なお、新しい運営になった現在の公式サイトには、合格に必要な学習時間に関する記載はありませんが、旧運営と新運営の最上位級の難易度は同じように設計されていますので、新運営でも900時間が目安と言えます。
*JLPTはwriting能力やspeaking能力は測りません。
https://www.jlpt.jp/faq/
https://www.jlpt.jp/about/pdf/comparison01.pdf

(2)FSIの資料では、ネイティブレベルになるには2,200時間
アメリカのFSI(Foreign Service Institute. 外交官などの専門職を養成する米国務省機関)がまとめた習得難易度(Language Learning Difficulty for English Speakers)によると、英語話者にとって日本語は、アラビア語、中国語(広東語、北京語)、韓国語、と共に最も難度の高い言語と位置づけられていて、日常的・専門的コミュニケーションにほとんど不自由がない程度になるためには、2,200時間必要と記載されています。
https://www.state.gov/foreign-language-training/

別の記事では、中級レベルに到達するのは意外に簡単と書きましたが、マスターするのにはやはり時間がかかります。

日本語の習得は難しいと思われていますが、日常コミュニケーションレベルを目指すのでしたら、実はそれほど難しくはありません。その理由を、日本語の言語的特徴と合わせて説明します。

日本語が難しいと思われている主な理由としては次の点が挙げられます。
・「ひらがな」「カタカナ」「漢字」の3種類の文字がある
・敬語(*)がある。
(*敬語=相手が自分より年上の場合や偉い人の場合に、相手への敬意を示すために使う表現)
・数に関係する語彙が多い
・基本的な助詞遣いや語順が会話の中で変化する
・動詞は活用させなければ、正しく動詞を使えない。

しかし逆に、次のような特徴もある。
-母音が5つしかない。
-冠詞がない。
-名詞には単数・複数形の区別がない。
-動詞は人称変化しない。
-文法上、男性と女性、人間と物を区別しない。

どの言語でも上級レベルに到達するのは大変です。でも、「単語レベルではなく文レベルで会話ができる」「読み書きができる」を取り急ぎの目標とするなら、日本語は「学習しやすい言語」と言えます。もう一つ上の目標として、「日本人同士の日常会話が6割程度理解できるようになる」を目標としても、他の言語と比べてもそれほど難しくありません。

つまり、「日本語は意外と簡単」と言えます。

このブログでは、多忙なビジネスパーソンが、効率的に日本語を習得できることを目指し、戦略的な日本語学習法について解説していきます。

ビジネスパーソンは、日本語の使用環境や学習環境が学生とは異なります。そこで、第二外国語習得理論に加えて、コストパフォーマンス、タイムマネジメント等の観点も踏まえ、多くの日本語学習者が抱える疑問について、世界初のオンライン日本語学校であるJ-OS(Japan Online School)代表の小池がコメントします。これらの情報を知っていれば、あなたの日本語学習の成功率が大きく飛躍するでしょう。

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